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ぶっつけ落

 江戸っ子と言えば宵越しの金を持たないものと相場が決まっています。例えば、

江戸っ子の生まれぞこない金を溜め

などという川柳があるぐらい、江戸っ子の金離れの良さは定評があるようでして、そうすると、今、東京でお金持の方々というのは、江戸っ子の生まれぞこないか、はたまた地方出身者かなどと思ったりしますが、脱線話はこのくらいにして。

 さて、宵越しの金を持ず、明日は明日の風が吹くなんていっている江戸っ子ですが、彼らでもどうしようもないのが大晦日でして、どうにかなるよで通してきた1年365日分がこの日に降りかかってくるわけです。この大晦日、借りた方も大変ですが、貸した方も大変。そこかしこで虚々実々の駆け引きが繰り広げられることになります。

 この言訳座頭というのは、返せないことを他人に代わっていろいろと言い訳してくれる大変ありがたい人物です。泣き落とし、居直り、なんだか訳の分かるような分からないような理屈を並べ立てて相手を煙に巻いたりと、様々な手練手管、口八丁を見せてくれます。

 オチは、頼まれた分の言い訳をしてから、

「これから私の分の言い訳をしてきます」


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