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見立て落

 昔の郭では、お金を払えない客を、金の工面がつくまで行灯部屋に閉じこめておくということをしました。これを居残りと言います。

 佐兵次さんは、汚い自分の家でごろごろしているよりは、きれいな品川の女郎屋の方がよっぽどましと、大いに飲み食いし、大いに楽しんだあげく、さっさと居残りを決め込みます。

 こういう大胆な人ですから、居残りにもかかわらず、お座敷に顔を出しては、他の客を接待し、一緒に楽しんで、なかなか快適な生活を続けます。

 見かねた店の者が、頼むから帰ってくれとお金を渡し、とにかく帰すという本末転倒の見本のようなお噺です。

 とりあえず、教訓。世の中、図々しいぐらいの方が楽しめる。


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