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途端落

 商売というのは、いろいろとコツがあるものでして、例えば屑屋さんなんかだと、大声で呼ばれたときは、それほど大したものは見込めない。むしろ小声で呼ばれたときの方が掘り出し物があるのだそうです。

 同じく小声で呼ばれた方がいいのが、夜泣きソバ屋さんで、お店の小僧さん達が主人に隠れて食べたのだそうです。こういう時は、ソバ屋の方も心得たもので、大声で「はいよ」なんて返事するのではなく、こっそりと持ち込まないといけません。もっとも、小声で呼ばれたからといって、いつもいつも儲かるとは限らないようでして……

「(小声で) ちょっと、うどん屋さん」
「(やはり小声で) へい、うどんを差し上げましょうか」
「(小声で) うんと熱いのを1つ」
「(やはり小声で) へい、わかりやした。(独り言) この人はきっと試しに食べるんだな。うまかったら、みんなが代わりばんこに出てきて食べようってのに違いない。ようし、ここはひとつうんとうまくこしらえておこう。(小声で) お待ちどうさま」
「(小声で) ごちそうさま。お代はここに置いておきます」
「(小声で) ありがとうございます」
「(小声で)> うどん屋さん」
「(身を乗り出して、しかし小声で) へい、なんでしょ」
「お前さんも風邪かい?」


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