その昔、床屋さんと言えば、ちょっとした社交場の役割も果たしておりました。漫画や雑誌は勿論、将棋盤や囲碁盤なんかもあって、町内の暇をもてあました連中が、時間つぶしにもってこいの場所となっていました。娯楽が少なかった時代の話です。
この噺は、そんな床屋での客同士の馬鹿なやりとりを面白おかしく演じる物になっています。
落ちは、そんな客のやりとりに気を取られた店主が、
「しまった、さっきまでそこにいた、あいつから金を取るのを忘れた」
「誰だい? あぁ、畳屋の熊公か」
「なに、畳屋? どうりで床を踏みに来たんだ」