世の中には、2種類の人間がいるものでして、お金が貯まる人と、そうでない人です。残念ながら僕は後者でして、給料日が毎月25日なのですが、どういうわけか月末の30日ぐらいで、早くもきゅうきゅうとしております。
それはともかく。
さて、お金が貯まると一口で申しましても、大金持になる人と、小金持ちになる人に分かれます。大金持というのは、意外なことに、どかーんと大金を使うものです。なんでも一晩100万単位でばーっと宴会をしちゃうことも日常茶飯事なのだそうで、それでいて、入るときは1000万単位だから、ますます増えていくというわけです。何ともうらやましい限りですが、他方で、小金持ちというのは、それこそ部屋の明かりを消してまわったり、西にバーゲンがあると聞けば、すっ飛んでいき、東で大安売りと聞けば、行って人を押し分けるといった具合で……。
あれ? 西念のやつ、薄暗い部屋で餅なんか並べて、何をやってんだろ。あんこだけ取り出してなめてるけど、嫌な食べ方だなぁ。餅だけ残したって仕方ないだろうに。なんか難しい顔して考え込んでるけど、さっさと食べてしまえよ。じれったいなぁ。おいおい、餅の中に、お金を詰め込み始めやがった。まさか、餅の中に金を入れて「金餅」なんて駄洒落じゃないだろうな。うわぁ、食っちまいやがった。ははぁ、さては、あいつ、ああやってお金を隠しておくつもりだな。これだから、ケチってのはやだねぇって、なんだ、急に苦しい顔して、まさか喉を詰めたんじゃないだろうな。おい、西念さん、大丈夫か、しっかりしろ。あれ、死んじまいやがったよ。どうする。
というわけで、ひょんなことから小金がいっぱい入った死体を持つことになってしまった男が、他人に知られないうちに、さっさと火葬して、まんまと金を手に入れるというのが、このお話です。
ちなみに、東京目黒にある黄金餅の由来は、これだったりします。