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考え落

 病気の原因が、体の中にいる虫が悪さをしているからだと考えられていた時分の話でございます。当時、男性特有の病に、突然激しい腹痛に襲われる疝気というものがありました。これは、今ならストレスで腸にガスが溜まっているぐらいで片付けられますが、当時は疝気の虫が、おなかの中で走りまわっているからだと医者はしたり顔で患者に説明していました。

 この疝気の虫は、普段はおなかの中でおとなしく暮らしているのですが、大のソバ好きで、宿り主がソバを食べると

「自分も食べたい!」

とアピールするのだそうで、これが腹痛の原因だと思われていた訳です。ところで、この疝気の虫は唐辛子が苦手で、唐辛子が来ると知るやいなや、大急ぎで別荘に逃げ込むことになります。この別荘というのが、なんといいますか、そのぉ、男性の股間にぶら下がっているものでございます。

 さて、話は、疝気の虫が、ひょんなことから女性の体に入ってしまったことから始まります。いろいろよ悪さをしていると、とうとう女性が唐辛子を飲んだので、慌てて別荘に飛び込もうとしたところで

「いかん。別荘がない!」


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