ゲジゲジ |
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仕事から帰った夫は、普通の家庭の旦那衆と同じく、ビールを飲みながら、テレビの野球観戦を始めました。あっこさんも、普通の奥様と同じように手際よくビールのつまみを作り、夫に差し出しました。 今日のつまみは、山盛りのレタスに、山盛りのワカメ、それにニンジンのスティックです。最近血圧が高いことを気にしている夫への、心憎いばかりの気配り。さすがです。 つまみを出したあっこさんは、夕食の準備をしに台所へと戻っていきました。夫は、こんなに野菜ばっかりたくさん食べられないぞ、と言いつつも、ビールを片手にサラダをつまみながら、野球観戦を続けました。 しばらくして、調理を終えたあっこさんは夫の野球観戦につきあいながら、夫と食事を取り始めました。その日、読売ジャイアンツは、横浜ベイスターズを相手に、圧倒的な試合運びをみせ、ジャイアンツファンの夫は、大変幸福でした。どうでもいいですけど、その日、阪神タイガースも勝ったので、冨倉も、大変上機嫌でした。 ともあれ。 「今日ね、ゲジゲジが出たの」 と、あっこさんは言いました。 「すっごく恐かったの。でもね、流しの方に逃げていったから、そのまま水で流しちゃった」 と、あっこさんは、夫にゲジゲジ出現事件の顛末を報告しました。 ところで、ゲジゲジは、どうやら地方によって違うようです。あっこさんの生まれ故郷の新潟では、ゲジゲジというとムカデのことのようです。九州生まれの夫にとっては、ゲジゲジと言えば、毛虫のことなのだそうです。ちなみに京都では、ムカデの小さいヤツのことをゲジゲジと言います。 話を元へ。 「それでね、そのゲジゲジなんだけど」 と、あっこさんはチラチラと夫の顔を見ながら続けました。 「どうも、レタスから出たようなのよね」 |
あっこさんメモゲジゲジが出たレタスは、まず夫に食べさせる。 |
この話は実話を元に、冨倉が若干の脚色を行ったものです。実在の人物、場所、事件となにかの関連性があったとしても、それは気のせいなどではなく、多分本当に起こったことです。なお、本件に関する苦情、その他につきましては、冨倉までご連絡ください。
【目次】
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