そのまんま

 先日、姪が産まれたということで、妹夫婦宅におじゃましたときのこと。

 妹は、生け花というものに凝っていた時期がありました。兄の僕には何がどういいのか、さっぱりわからず(そもそも花の種類もほとんどわからないので)、適当にさしてるとしか見えなかったのですが、妹に言わせると、「この曲がり具合が」とか、この「色の組み合わせ方が」などと、僕にはちんぷんかんぷんなことをのたまわっていました。しかし、彼女がなんと言おうと、僕には「よーわからん」としか言いようがなく、そんな僕に対して妹は、「けっ、これだから野蛮人は」と吐き捨てるように言いました。

 そんな彼女も、今では主婦となり、小さな花壇にはキュウリだのミニトマトだのナスだのがぶら下がっていました。

 さて、夫が帰宅すると、あっこさんが、

「もうすぐナスがもげるね」

と言いました。

 何のことかわからず、夫がぽかんとしていると、あっこさんは「ナスがもげる、ナスがもげる」と嬉しそうに繰り返しました。

 そこでようやく、夫はあっこさんがボーナスのことを言っていることに気がつきました。

 あっこさん、あっこさん、それはちょっとそのまんますぎるんじゃないでしょうか。


あっこさんメモ

 ボーナスは、人を陽気にする。


 この話は実話を元に、冨倉が若干の脚色を行ったものです。実在の人物、場所、事件となにかの関連性があったとしても、それは気のせいなどではなく、多分本当に起こったことです。なお、本件に関する苦情、その他につきましては、冨倉までご連絡ください

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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2000.06.20 $