味覚 |
---|
お世辞にもグルメとは言えなかった我家の食卓は、アジの開きだの、イワシの丸焼きだの、サバの煮付けだの、基本的には魚系でした。たまに肉が食卓に並ぶなんてことになると、たとえそれがブタであれ、トリであれ、むさぼるように食べたものです。 その結果、どうなるかというと、会話弾む食卓なんてのは別世界で、とにかく「食べるぞ、隙あらば妹の分も食べるぞ」と、食事中は料理に集中して沈黙状態となります。成人してからも食事中に無言になる習性は抜けきらず、たとえ愛する彼女とのデートであれ、食事タイムとなると、彼女と会話を楽しむなんてどころの話ではなくなってしまいます。そのため、なんども苦い経験をすることになるわけで、子供の頃の食生活は大切だと実感している今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。 ともあれ。 あっこさんも夫も、食べるのは好きと言うこともあって、食事はちょっとばかり豪勢です。豪勢でなくても、一工夫してあるわけで、きっと八重ちゃんはすくすく育たれることでしょう。 そんなある日、いつものように食事を終えたあっこさんは、八重ちゃんに息を吹きかけました。何をしているのかとの夫の問いに、 「おいしい食べ物の臭いを教えてあげているの」 |
あっこさんメモ味覚を鍛えるには、まず嗅覚から。 |
この話は実話を元に、冨倉が若干の脚色を行ったものです。実在の人物、場所、事件となにかの関連性があったとしても、それは気のせいなどではなく、多分本当に起こったことです。なお、本件に関する苦情、その他につきましては、冨倉までご連絡ください。
【目次】
|