爪切り |
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赤ちゃんの手を紅葉に例えるのは、実に言い得て妙ですね。 しかし、美しいものにはトゲがあるように、可愛いものにも危険はつきまといます。実際問題、赤ちゃんの手は、凶器以外のなにものでもありません。 邪気のない、しかし手加減もない赤ちゃんのツネリは、つねられた相手に結構深いダメージを与えます。あっこさんの夫も、最近、しばしば鼻の頭にひっかき傷をこしらえておられます。 と言うわけで、あっこさんはやえちゃんの爪を切ることにしました。 ベビーチェアにやえちゃんを座らせ、小さな手を引っ張り出し、パチンパチンと爪を切り始めました。 すると、何が悲しかったのか、やえちゃんは瞳一杯に涙を浮かべ泣き始めました。 それを見ていた夫は、自分の身の安全のためだということも忘れ、「やめてやれよ。泣いてるじゃないか」と厳しい口調であっこさんに爪切りをやめさせようとしました。 すると、あっこさんは、 「これ、うそなきよ」 その瞬間、やえちゃんはピタッと泣くのをやめ、決まりの悪そうに笑みを浮かべました。 子を知るに親にしくはなし。しかし、娘を知るのはどうやら母親のようで……。 |
あっこさんメモ女の涙が通用するのは男だけ |
この話は実話を元に、冨倉が若干の脚色を行ったものです。実在の人物、場所、事件となにかの関連性があったとしても、それは気のせいなどではなく、多分本当に起こったことです。なお、本件に関する苦情、その他につきましては、冨倉までご連絡ください。
【目次】
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