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東京日記

著者リチャード・ブローティガン
タイトル東京日記
出版社思潮社出版年1992年価格1880円
評価★★★★

【感想】

 1976年というから、いまから四半世紀むかし。1人の異邦人が東京を訪れ、1ヶ月半の短い滞在の後、東京を去った。

 それから四半世紀後、僕は東京で一人暮らしをしている。かつての異邦人と同じく、僕もやはり異邦人として。

 1976年の異邦人と、2000年の異邦人の違いは、彼が詩人であったのに対して、僕は詩情を持ち合わせていない。残念なことに。ただ、僕も彼も、一人遊びが得意だという点で似ている。もって生まれた人なつっこさとなんの矛盾もなく。

 異邦人は異邦人なりに、東京を楽しむことができる。東京は見るべきところがたくさんあり、見るべき人がたくさんいる。もっとも、見るべきところがない場所などないし、見るべき点がない人もいないのだろうけれど。

 いうまでもなく、僕が詩を書けないのは、才能によるところが大きい。ただ同時に、僕は雄弁よりは饒舌を、とぎすまされた言葉の結晶よりは、何も考えていないあぶくのような言葉の大群を好む。それは僕が、直接的な感情表現が照れくさくて、オブラートにくるんで伝える、あの京都の人々と根っこでつながっているからかもしれない。


 『東京日記』は、ブローティガンの最後の詩集です。1976年5月14日に日本を訪れ、6月30日午後9時30分にアメリカに帰るまで、まるで日記のように書かれた詩の数々が集められています。ブローティガンの詩は、詩人の中で起こった感情が、そのまま言葉へと転化されています。例えば、「コバルト色の必要性」について、彼はこう書いています。

こういうものってあるだろう
コバルト色が必要だとなると
 ほかのものではけっして
  みたされない

 このように、特別な言葉を使うわけではなく、それでいて、人を動かせる言葉群を生み出すこと、それが詩人だと僕は思います。

 それにしても、同じ「東京日記」と題しながら、この落差はなんだろう。ちょっと反省。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2000.04.23 $