著者 | トム・シャープ | ||||
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タイトル | 狂気準備集合罪 | ||||
出版社 | 講談社 | 出版年 | 1985年 | 価格 | 1500 |
評価 | ★★★★★ |
本書は、アパルトヘイト全盛の南アフリカを舞台に、一本の電話から始まります。
ズール戦争で輝かしい武功をあげた将軍や、黒人の犯罪・政治的陰謀を解決してきた判事を祖先に持ち、自身もファッションリーダーとして雑誌などに寄稿する由緒正しい英国婦人からかかってきた電話は、黒人のコックを射殺したというもの。電話を受けた署長は、事件のもみ消しを図り……。
こう言うと、黒人差別という問題を扱った社会派サスペンスとなりそうですが、そこはイギリス人。これを軽妙なドタバタ喜劇に仕立て上げます。
老イギリス婦人の窮地を救うため、署長の迷推理は冴え渡り、人のいい牧師様を「真」犯人に仕立て上げ、部下は部下で、老婦人の飼い犬と大立ち回りを演じ、挙げ句の果てにはランボーさながらに、たった一人で装甲車を含む救援の大部隊とドンパチをやらかすといったありさまで、事態はどんどん混迷を深めていきます。
加えて、当のイギリス婦人は、署長の隠蔽工作をよそに、自首を考え、警察署を訪問するものの、狂人と間違えられて、精神病院に入れられたり、心臓発作に悩まされている署長は、牧師の心臓を移植することを考えたりと、どんどんと事態はあらぬ方向へと進んでいきます。はたして、無実の罪で死刑を宣告された牧師の運命やいかに。
久しぶりに、映画で観てみたいと思う小説でした。