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コドモ感覚

著者デリア・エフロン
タイトルコドモ感覚〜大人にならないための19レッスン〜
出版社研究社出版 出版年1987年 価格1200
評価★★★

【感想】

 エフロン氏は、本当に子供が好きなのでしょう。

 本書は、子供の実態観察として、秀逸な作品です。単純に「子供は可愛い」「子供は可愛い」「子供は可愛い」と連発しているような他の作品に比べて、子供の意地悪さ、ずるさを余すところなく忠実に描写しています。

 例えば、

「子供のように食べるには」
ホーレンソー:少しずつ山に分ける。その山をくずして、また新しい山をつくる。これを5、6回繰り返してから、椅子の背中にもたれて「おなかいっぱいだ!」という。

とか、

「ペットの飼い方」
イヌ:イヌに餌をやる時間よ、といわれたら「ちょっと待って」と答える。散歩させる時間よ、といわれたら「すぐやる」と答える。またいわれたら、いま見ているテレビが終わったら、と答える。(中略)毎日、ぐずぐずして、文句を繰り返し、自分でやったほうがずっと楽だとママに思わせるまでガンバル。

と言った具合で、思わず、彼女の観察眼に拍手を送りたくなるぐらいです。

 もっとも、僕は子供の頃、お世辞にも「いい子」ではなかったので、

「車に乗るとき」
「ぼくが前に座るんだ」
「あたしだもん。お兄ちゃん、いつも前じゃない」
「こないだは、おまえが座ったじゃないか」
「お兄ちゃんじゃない、こないだは」
「ちがうよ」
「座ったってば」
「座らない」
「座ったよ」
 なんてことを繰り返して、結局、二人とも後ろの席に座らされ、「この線から、こっちに入ってくるなよ。こっちは、僕の陣地なんだから」などと境界線を引き、目的地に着くまで、境界線を侵犯しただの、しないだの、空中なら侵犯にならないだのと間抜けな国境紛争を繰り返し、挙げ句の果てに親に叱られて、「お前のせいだ」「お兄ちゃんのせい」と責任のなすりつけをするといったありさまで、この本を読んでいる間、自分の子供時代を思い出して、苦笑の連続でした。

 最後に、アメリカ人が、なぜあんなにもくだらない冗談で大笑いできるのかという昔からの謎の答えが分かったことをご報告します。

「きったないジョークをいったろうか。豚が泥にボチャーン! どうだ。キッタネーだろ」
 ただちにそれを10回繰り返す。

 こんなことを子供時代から繰り返していたら、ジョークの質が下がるのも無理ありません。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2000.07.11 $