著者 | アレクサンドル・ケレンスキー | ||||
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タイトル | ロシアと歴史の転換点−ケレンスキー回顧録− | ||||
出版社 | 恒文社 | 出版年 | 1967年 | 価格 | 2000 |
評価 | ★★ |
これは、帝政末期からロシア革命を経て、ソビエト社会主義体制ができるまでの混乱した時代に関する貴重な証言です。
通常、歴史の教科書では、この時代のロシアについて、
「革命によって帝政が崩壊したものの、樹立された新政権が戦争を継続したため、第1次世界大戦に疲れていたロシア国民は、即時停戦を主張する共産党を支持した」
と簡単に説明しています。
しかし、個人的には、共産党が説明するような、「総力戦により、階級間対立が激化し、それが革命へとつながった」というのは、やや素朴すぎるように思えます。むしろ、当初は総力戦を遂行する上で、憲法の未整備等のロシアの意思決定機関の不備が問題となり、それが各政党の権力闘争へと発展し、その権力闘争に勝ったのが共産党だったのではないかと思っています。言い換えれば、ロシア革命は、社会革命ではなく、通常の政治闘争だったのではないかと考えています。
著者ケレンスキーは、言うまでもなく、ロシア革命の一方の当事者であり、政治的敗北を喫した人物です。そのため本書は、当然、レーニンおよびボルシェビキに対する批判の書となっています。無論、当事者の書いたものであるため、ある程度割り引いて読まなければいけない部分はあるものの、それでも、当時の政治状況を知るために欠かせないものです。 ケレンスキーは、国内の安定よりも国際関係を優先した点で失策を犯したと言わざるを得ません。