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魔道書ネクロノミコン

著者ジョージ・ヘイ編
タイトル魔道書ネクロノミコン
出版社学研 出版年2000年 価格580
評価

【感想】

 ラヴクラフトの「クトゥルー神話」には、不思議な魅力があります。

 正直に言えば、ラヴクラフトの一連の怪奇小説にはあまり感心していません。実際、ラブクラフトの小説は、ほとんどの場合、オカルトなどに全く興味のないごく普通の人物が、偶然に旧神の存在に触れてしまい、尋常ならざる体験をした後、発狂するか犠牲になるかというパターンを踏襲しています。さらに、「禍々しい」「とても書けない」「冒涜的な」という修飾語を連発することで、旧神の姿がいかに異常であるかを伝えようとしているわけで、お世辞にも表現が豊であるとは言えません。

 このように、小説家としてみた場合のラブクラフトは、僕の基準で言えば辛うじて及第点といった感じなのですが、僕が彼に魅力を感じるのは、ここの小説と言うよりも、彼の作品群によって明らかになる神話体系です。

 クトゥルーの神話体系の根幹は、遠い昔、旧き神々がいて、勢力争いの後、あるものは深海で永い眠りにつき、あるものは異次元に閉じこめられているが、時が来れば再び地上に姿を現すという、ある意味ではありきたりなものなのですが、ラブクラフトは、1冊でこの神話体系の全てを記述するのではなく、彼の作品全てで叙述しています。そのことが、彼の作品を読む読者に新しい発見と、ちょっとした謎解きの知的興奮を与えます。

 本書では、そうしたラブクラフトのクトゥルー神話に1つの現実的な解説を行っています。惜しむらくは、ラブクラフトとその後継者たちの手によるクトゥルー神話に関する書籍一覧があればもっといいものになっていたのに。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2000.10.10 $