著者 | ミゲル・トルガ | ||||
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タイトル | 方舟 | ||||
出版社 | 彩流社 | 出版年 | 1984年 | 価格 | 1500 |
評価 | ★★ |
先月はほとんど本を読めませんでした。読書の秋だというのに、このていたらく。少し反省。
それはともかく。
日本人の僕には、必ずしも理解できない1つに、ヨーロッパの人々、特にカソリックの強い地域の人々の方舟に対する感情があります。
父なる神が、堕落した創造物に対する懲罰という方舟のモチーフは、キリスト教徒にとっては、神の倫理的な優越を示すものなのでしょうが、僕にとっては、方舟は、まさに神の絶対性の否定にほかならないとしか思えません。
本書に収められている「烏のヴィセンテ」の中で、洪水に対するヴィセンテの怒り、彼の不服従行為に、キリスト教徒ではない僕は深い共感をおぼえます。
たとえ僕が神の被造物であるにせよ、一個の存在であるとするのならば、たとえ思い上がり以外のなにものでもなかったとしても、自律を志向するべきだと思います。たとえ、それが全能ではない人間の身には不可能だとしても。
僕が、たとえ倫理的・道徳的に優れているにしても、キリスト教をはじめとする宗教家に対して本質的な異議を唱えたくなるのは、こんな理由だったりします。まだまだ青いのでしょうけれど。