著者 | 安能務 | ||||
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タイトル | 三国演義 第一巻 | ||||
出版社 | 講談社 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 667 |
評価 | ★★★★★ |
いよいよ安能版「三国志」の始まりです。
安能氏の歴史小説を僕が高く評価しているのは、彼が歴史上の事件・人物を評価する際に、倫理的な基準ではなく、あくまでも政治的な効果の基準を用いる点です。
一般的に三国時代を扱った作品では、人徳者としての劉備、策略家の曹操、そして今一つキャラが立ってない孫権として描かれることが多く、最近ではそうした伝統的な描写に異議を唱え、劉備を偽善者、近代的な合理主義者としての曹操、やっぱりキャラの立ってない孫権という描かれ方をしています。こうした背景には、もとになっている三国演義が、儒教色が強いことが挙げられます。この三国時代の中心的な役割を果たした三人を安能氏がどの様に評価しているのか、大変興味深いです。
第一巻の本書は、有名な劉備・関羽・張飛の儀式から始まり、董卓政権の興亡、呂布の末路を中心に描かれています。期待に違わず、英雄たちの活躍の実態を描写しつつ、なおかつ「演義」として十分楽しめます。まさに歴史「小説家」としての安能氏の面目躍如といったところです。
ちなみに、従来、粗暴な人物として描かれることが多かった張飛が、実は歴史に身を投じるまでは三兄弟の中でもっとも成功していた生活を送っていたというのは、僕にとっては新しい発見でした。