著者 | 安能務 | ||||
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タイトル | 三国演義 第二巻 | ||||
出版社 | 講談社 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 667円 |
評価 | ★★★★★ |
歴史小説を読んでいて、著者の意見が登場人物のセリフを借りて語られる場面に出会うと、僕はがっかりします。あるいは芝居がかったセリフに出くわしたときも、やっぱりがっかりします。
もちろん歴史書ではなく、あくまでも小説だから、実際に言った言わないを詮索するのは野暮というものですが、他方で、実在した人物を描く以上、いかにも「言いそう」と思わせる必要があるのではないでしょうか。
安能氏の歴史小説と塩野氏の歴史小説は、極力、歴史上の人物に「セリフを言わせない」という点で共通しています。言い換えれば、あまりにも違和感なくセリフが書かれるため、登場人物のセリフが本当にその人が言ったのかどうかを判断するのが難しいということなのですけれど、あくまでも小説ですから、その点はその点は割り切って楽しめるものになっています。
本巻では、有名な官渡の戦いを中心に、劉備と孔明の出会いまでを描いています。
三国時代の転換点の一つである事件を、安能氏は実にいきいきと、それでいて、ある種の枯れた客観的な記述によって読者の目の前によみがえらせてくれます。その巧妙さにただただ頭が下がります。