著者 | 丸谷才一 | ||||
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タイトル | 男もの女もの | ||||
出版社 | 文藝春秋 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 667円 |
評価 | ★★★★★ |
肩の力を抜きたい時に読む本というのは誰にでもあるのではないでしょうか。僕にとっては丸谷氏のエッセーが、それにあたります。
氏の知識の豊富さ、思考の幅広さに基づくエッセーは、まるでジェットコースターに乗っているかのように実に爽快です。同時に、氏の独特の文体によって、氏の思考のめまぐるしさがうまくく緩和され、心地よい知的興奮を感じながら、なおかつリラックスした状態になれるわけです。
このエッセーでも、ネクタイを論じたかと思うと、阿部定事件に言及し、さらに日本におけるディープ・キッスのあり方についてを論じると、本当に幅広い思考を展開しています。
丸谷氏のエッセーの特徴は、決して自分の考えを押しつけるでもなく、かといって、自分の意見の正しさを誰かに確認してもらおうともしない。対象への踏み込み方と引き方が実に絶妙な点にあります。
僕も丸谷氏のような文章を書ければなどという大それたことは、さすがにこの歳になると考えませんが、それでも、丸谷氏の持っている感覚を楽しみ続けられるような歳の取り方をしたいものです。