著者 | 安能務 | ||||
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タイトル | 三国演義 第四巻 | ||||
出版社 | 講談社 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 667円 |
評価 | ★★★★★ |
本巻では、劉備が蜀を奪取し、ようやく「領域国家」の指導者としての地位を確立します。
考えてみれば、劉備という人物は不思議なキャラクターだと思います。曹操が比較的初期に、孫権は兄から引き継いだ時点で政治的基盤としての「領域」を確保していたのに比べて、劉備はかなり長い間、そうした政治的基盤を有していませんでした。その彼が、三国鼎立の一つの軸になり得たことは、考えてみれば不思議な話です。
中国古代史にウェーバーの政治哲学を適用することはヤボだと思いつつ、おそらく劉備はウェーバーの言うカリスマ的支配者であり、カリスマ的支配者が守らなければならないことを忠実に守りきった、数少ない政治家だったのではないかと思います。
劉備は、彼の権力の源泉が、自らのカリスマ性にあること、そしてそれは「漢王室の血を引いている」ことではなく、「漢王室の血を引いていることを前提とした行動をとり続ける」ことだということを自覚・無自覚はともかく、忠実に履行し続けました。
安能氏は、この点を指摘し、劉備の政治的資質を高く評価しています。一般的に、劉備を「義の人」と評価しつつ、政治家としての資質については疑問を投げかけることが多いのに比べて、安能氏の劉備評は的を射ているのではないかと思います。
それにしても、本巻を読んでいて感じたのですが、魏呉蜀の三国の中で、蜀の人材って、本当に不足していたんですね。