三国演義　第5巻

【感想】

　安能版三国志も、いよいよ佳境です。

　本巻では、関羽・張飛・劉備が亡くなり、豪傑の時代が終焉を迎え、いよいよ軍師の時代になります。

　シリーズを通じて、安能氏は劉備のことを政治的なしたたかさ、しぶとさを持った人物として描いています。軍事的には関羽、張飛に支えられ、政治的には孔明に一任していたような描き方をされることが多い中で、単なる人徳者ではなく、したたかな政治家としての劉備像というのは、画期的なのではないでしょうか。

　ともあれ、曹操に続き劉備が舞台を去ったことで、なんとなくヤクザのなわばり争い的な三国時代から、いよいよ国家対国家の争いの時代へと突入します。ここから先は、孔明が、苦心惨憺してなんとか三国鼎立を維持することに腐心することになります。笛吹けど踊らず的な蜀の人々の尻をひっぱたいて、漢中への出陣をくり返す孔明を見て、これまでなんとなく取っつきにくい印象しかなかった彼に、少し同情してしまいました。