著者 | カート・ヴォネガット | ||||
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タイトル | バゴンボの嗅ぎタバコ入れ | ||||
出版社 | 早川書房 | 出版年 | 2000年 | 価格 | 2400 |
評価 | ★★★★ |
僕の文体で最も影響を受けた作家は? と聞かれれば、間違いなくヴォネガットと答えます。それぐらい僕はヴォネガットの文体(と浅倉久志の翻訳)が大好きです。短いセンテンスで話をつないでいくスタイルは、ジャズの即興を聴いているような気分になります。
本書は『タイムクエイク』で事実上の終筆宣言をしたヴォネガットの初期の短編集を集めたものです。初期の作品ということもあって、独特の文体、SF的な要素こそ少ないものの、それでも後のヴォネガットの作品に見られるある種突き放した、それでいてあたたかでスラプスティックなユーモアがちらちらと見え隠れしています。
後にヴォネガットは、自分がSF作家と呼ばれることをあまり好まなかった(これについては、ヴォネガット好きで、かつSF好きな僕のような人間は複雑な感情になるのですけれど)と言われることも、本書に収められた作品を読めば納得できます。むしろ、よく言われるように、ヴォネガットはマーク・トゥエインの正統な後継者だとあらためて認識させられます。
などなど、あまり小難しいことを考えなくても、ヴォネガットファンなら、十分楽しめる一冊です。