著者 | 安能務 | ||||
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タイトル | 三国演義 第6巻 | ||||
出版社 | 講談社 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 667 |
評価 | ★★★★ |
これで完結です。
安能氏といえば、『封神演義』以来、一貫して中国史を題材にした歴史小説を書かれてきたわけですが、その彼が一番最後まで三国志の時代を描くことを温めてきたと言う事実は、あらためて三国志というテーマが、歴史小説家にとって大きな魅力のあるものだと実感しました。
安能氏の中国史を題材にした歴史小説の特徴は、3点あります。
第1は、一貫して儒教的な教条主義を排除して、むしろ道教的な視点から描かれていること。
第2は、史実か虚構かをそれほど厳密に考えず、演義の明らかな誤りの部分だけを補足するという姿勢で書かれていること。
第3は、個々の登場人物の色づけを極力控えること。
この結果、安能氏の歴史小説は、著者の思想を読者に押しつけることなく、その時代の実体を浮き彫りにし、いきいきとしたものとして読者の目の前で展開することになります。
中国の歴史に興味のある方は、『三国演義』以外の安能氏の作品も一度読まれることをお勧めします。