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著者 | ギヨーム・アポリネール | ||||
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タイトル | 異端教祖株式会社 | ||||
出版社 | 白水社 | 出版年 | 1989年 | 価格 | 880 |
評価 | ★★★ |
日本人の僕には感覚的によく分からないのですが、ヨーロッパの人々にとって、やはりキリスト教は肯定的であれ否定的であれ強く影響しているようです。本書では、宗教的なテーマをモチーフに、実に幻想的な短編が集められています。
ヨーロッパの宗教界において、フランスは特異な存在で、いわゆる旧教の影響が、本家のイタリアよりも近世まで強く残り、その反動として市民革命以後、宗教に対して懐疑的(否定的)な態度を示すようになっています。しかし、懐疑的であればあるほど、宗教に対する関心は深くなるというアンビバレントな立場に立つことになるわけです。
本書もこのような文脈においてとらえられるのではないかと僕は思います。本書に登場する語り手達は、宗教的な出来事、振る舞いに対してある種の冷ややかな態度をとり続けています。そうした立場をとる語り手達の周囲で宗教的としか言いようがない神秘的な出来事が発生するシチュエーションは、ともすればスラプスティックな状況になりがちですが、アポリネールは、そこを実に巧みに押さえた筆致で淡々と描ききります。
ともあれ、宗教という彼岸の存在とビジネス(有り体に言えば金儲け)という此岸の存在が、奇妙にクロスオーバーしているように感じられる現代において、表題は非常に暗示的です。
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