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著者 | フィリップ・ロス | ||||
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タイトル | ゴースト・ライター | ||||
出版社 | 集英社 | 出版年 | 1984年 | 価格 | 1300 |
評価 | ★★★★★ |
本書は、あの『アンネの日記』を書いたアンネ・フランクが本当は生き延びていて、アメリカの片田舎で生活していることを縦糸に、若い野心的なユダヤ人作家が、ユダヤ人の家族をモデルにした小説でコミュニティに混乱をもたらしていることを横糸にし、その縦糸と横糸を結びつける点として、俗世から離れ、片田舎でひっそりと暮らす老作家を位置づけています。
この作品は、はたしてこのアンネが、本当にアンネなのか、それとも単にアンネの名を騙っているだけなのか。言い換えれば個人のアイデンティティの問題と、一般的に虐げられている存在が、集団化することにより逆に虐げる存在に変化してしまうという集団のアイデンティティ問題という21世紀の現在でも十分通用するテーマを扱っています。
しかし、僕にとっては、そうした問題は必ずしも中心にならず、雪に囲まれた一軒の古い家。暖炉のある応接室で、年老いた作家が若い作家と対談する。その光景を思い浮かべるだけでワクワクします。
コミック的な小説ではなく、絵画的な小説をお探しの方にお薦めの一冊です。
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