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近代成立期の人間像

著者ディルタイ
タイトル近代成立期の人間像
出版社理想社 出版年1966年 価格2400
評価★★★

【感想】

 ここのところ柔らかめの本か、そうでなければ仕事関係の本ばかり読んでいたので、たまには堅めの本を。と言っても、僕が読みたいと思う堅めの本って、この程度なのですけれど(そう言えば、今年になって全くグローバル・シミュレーション系の勉強してませんな。反省)

 それはともかく。

 本書は西洋的な近代人のバックグラウンドについて分析しています。ディルタイの論考の骨子は概ね以下の通りです。

 「宗教的動機」「美-智的態度(言い換えればギリシア哲学)」「合理的意志(言い換えれば、ローマ的合理精神)」が西洋中世の形而上学の主要な要素を構成していたとディルタイは指摘します。
 近代(具体的にはルネサンス・宗教改革)とは、この3つの主要な要素が解体される時代だったというのがディルタイの立場です。それを、ペトラルカ、マキアヴェリ、モンテーニュ、エラスムス、ルター、ツヴィングリ、セバスティアン・フランクを取り上げて説明します。
 その上で、ディルタイは、確かに近代は古典時代(言い換えれば、キリスト教以前の時代)への回帰であったが、だからといって中世と近代が断絶しているわけではなく、むしろ中世的なものが解体される過程において何が解体され、何が残ったのかを解明しようとします。

 こうした視点は僕自身は非常に有効だと考えています。少なくとも人文科学において、単なる個別的な切り取りや、あるいは連続性に主眼をおいた解説は、意味がないとまでは言わないまでも、あまり意義があるとは思えません。むしろ、連続性と断絶性の両面から、整理していくことが重要なのではないかと思います。そう言う意味で、本書はこの時代の思想史に興味のない方でも、人文科学を専攻されている方は一度目を通しておかれるといいのではないかと思います。

 ただ、訳が古いのが残念。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2002.06.30 $