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著者 | ジョルジュ・ブレスブルゲル | ||||
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タイトル | 歯とスパイ | ||||
出版社 | 河出書房新社 | 出版年 | 1997年 | 価格 | 2200 |
評価 | ★★ |
不思議なというか、人を食った小説です。
冒頭、
「できごとの日付に注意をしてくれたまえ。全部を足して、百で割ってみるといい。たぶん、その数字が何か重要なことを告げるだろう」
と意味深な告白があるにもかかわらず、それぞれの記録の日付はばっさりと割愛されてしまっています。その代わりに、詳細な歯列図が描かれ、念の入ったことにそれぞれの歯にはオリジナルの番号まで振られています。
主人公は東欧の某国のスパイです。でも、007のような活躍は全くしません。かと言って、スマートのようなずっこけもしません。味方のスパイへの連絡役など、地味な仕事を地味にこなしていきます。取り立てて大成功もしませんし、大失敗もしません。本当に淡々と仕事をこなしていきます。さらに言えば、彼の任務の内容は物語の中でほとんどふれられません。むしろ彼自身も自分の任務の本当の意味を知らされていないわけです。
本書では任務にまつわる内容よりも、歯列図に描かれた歯にまつわる治療話が詳細に語られています。これが痛そうなんですね。先日ようやく歯の治療を終えたところの僕としては、あの辛い日々を思い出してしまい涙なくしては読めませんでした(ちょっと嘘)。
スパイものファンの方にはお勧めしませんけれど、イタリアの底抜けの馬鹿馬鹿しさが好きな方にはかなりお勧めです。
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