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著者 | アメリー・ノートン | ||||
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タイトル | 殺人者の健康法 | ||||
出版社 | 文藝春秋 | 出版年 | 1996年 | 価格 | 2100 |
評価 | ★★★★★ |
アメリー・ノートンというすごい作家がいるということは、以前から聞いていたのですが、実際に読むのはこれが初めてです。
すごいです!
物語は後2週間で死亡を宣告されたノーベル文学賞作家とマスコミ関係者とのインタビューで進んでいきます。これが実にテンポがいいんですね。マスコミ関係者の相変わらずの間の抜けた質問を意地悪く切り返すシーンなんか本当に爽快です。あまりこのことを強調すると差し障りがあるのかもしれませんが、直接的・間接的にマスコミ関係者の言動に辟易している僕としては、読んでいて思わず喝采をあげそうになりました。実際さぁ、マスコミ関係者って、どうしてああもグダグダなんでしょう。どうもマスコミ関係者には、有名人に会ったことを自慢する人や自分の(と言いながら結局は他人から借り受けた)理屈に合わせるために誘導尋問する人があまりにも多すぎるように思います。なんかしたり顔で「みんなそう思っている」なんてことを言っているけれど、あなたの言う「みんな」に少なくとも僕は入っていないんですけど……。
話を元へ。
前半は、いかにもなインタビュアーとの質疑応答で進んでいくのですが、ニーナと名乗る女性の登場により、作家とインタビュアーの立場はしだいに逆転していきます。この辺りは種明かしになってしまうので、詳細には述べませんが、肥満で寝返りすら満足にできない怪物じみた作家と女性インタビュアーの対決は、『羊たちの沈黙』を彷彿とさせるものがあります。徐々に明かされる作家の隠された過去。そしてラストの決定的な出来事。そこまでぐいぐいと読者を引き付け続けるノートンの圧倒的な文章力。どれをとっても本当に素晴らしいです。痛快で、なおかつミステリアス。久しぶりに誰にでも勧められる小説です。本当にすごい。
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