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詳解ソフトウェア会計の実務

著者浜田康監修
タイトル詳解ソフトウェア会計の実務
出版社中央経済社 出版年2002年 価格4200
評価

【感想】

 今のところ僕は経理とか会計とかの仕事はやっていないのですが、基本的な考え方くらいは分かっていた方がよさそうだったので、ちょっと読んでみました。とりあえず、僕がどの程度理解していて、どの程度理解していないかさらしておきます。


ソフトウェア会計メモ


研究開発費の概要


研究・開発費の範囲

【典型例】

【注:研究開発に含まれない典型例】


会計処理

 研究開発費はすべて発生時に費用として処理する。

※ 外部委託の場合、報告を受けて研究の成果を利用できるようになった時点で費用処理する。

冨倉メモ
 ソフトウェアの場合、ベータ版の完成までが研究開発なのだろうか? それともリリース版のマスターが完成するまでが研究開発なのだろうか? でも、「製品を量産化するための試作」は研究開発に含まれない典型例に挙がっているので、やっぱりマスター版制作は研究開発費に含まれないと考えた方がいいのかもしれない。

市場販売目的のソフトウェア


制作費用

 市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければならない。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は資産として計上してはならない。

【研究開発終了前の制作費用】

 研究開発費に該当するソフトウェアの制作費は、発生時に一括費用処理しなければならない。

 研究開発費に該当するか否かは研究開発終了時点を明らかにすることにより判断する。研究開発終了前の制作費は研究開発費に該当する。

 一般管理費・当期製造費用のどちらかで処理する。

冨倉メモ
 うーん、これじゃあ、どこまでが研究開発費で、どこからが研究開発費じゃないのか、何も説明していないのでは……。
(研究開発の終了時点)

 最初に製品化された製品マスターの完成までの費用、製品マスター(または購入したソフトウェア)に対する著しい改良に要した費用が研究開発費に該当する。

 新しい知識を具現化するまでの過程が研究開発。したがって、ソフトウェアの開発過程においては、製品番号を付す等により販売の意思が明らかにされた製品マスターが完成するまでの制作活動が研究開発と考えられる。

 これ以降の制作費は資産として計上される。

(完成時点の基準)
  1. 製品性を判断できる程度のプロトタイプが完成していること
     具体的には、機能が完成しており、かつ重要な不具合を解消していること。
  2. 製品マスターについて販売の意思が明らかにされていること

【製品開発終了後の費用】

 製品マスター(購入したソフトウェア)の機能改良、強化を行う制作費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければならない。
 バグ取り等、機能維持に要した費用は、機能の改良・強化を行う制作活動には該当せず、発生時に費用処理する。

 著しい改良に該当するバージョンアップ費用は研究開発費として一括処理しなければならない。そうでなければ、資産計上する。
 著しい改良とは、製品マスターを構成する主要なプログラムの過半部分を再制作する場合や、ソフトウェアが動作する環境を変更・追加するために大幅な修正が必要な場合をいう。

(バージョンアップ)

 旧バージョンについては、著しい改良に該当しない場合は、新バージョンとするための改良費についても旧バージョンの資産価値を上昇させたものとして取り扱い、資産計上する。

 著しい改良の場合は、バージョンアップ後に使用しなくなるプログラム部分に見合う未償却部分について廃棄処理を行う。

(外部購入ソフト)

 外部購入のソフトウェア費用は、資産計上する。販売毎の使用許諾料については、販売するたびに売上原価として原価投入し、資産計上するソフトウェアに含めない。

 著しい改良に該当する改変を加えて販売する場合は、研究開発費として検収時に一括費用処理する。

 製品マスターが有する主要な機能を補助するためのソフトウェアやオペレーションシステムを購入した場合は、研究開発のための材料として機能するため、発生時に一括費用処理する。

(カスタマイズ費用)

 カスタマイズ費用は、製品マスターとして資産計上しない。売上原価として計上する。カスタマイズが完了するまでに相当の期間を要するケースでは、それまでの間、カスタマイズ費用を仕掛品等の科目で資産計上する。

【研究開発の外部委託部分について】

 製品マスターの完成に必要な費用で、製品マスターが完成する前に発生した場合は、研究開発費として処理する。

 製品マスターの完成後に発生した場合は、委託制作費は研究開発費に該当しない。機能改良等の委託制作費は資産計上し、機能維持やバグ取りに要した委託制作費は発生時に費用として処理する。

(派遣)

 通常の費用と同じく、発生時に費用処理

(部分的な開発委託)

 利用可能となった時点で費用処理。ただし、契約で明らかな場合は、部分検収を行った都度、費用処理する。検収前に支払う契約金や分割支払金は前渡金として処理する。

(製品マスターが対象になっている一括請負)

 製品マスターの完成品対価の中に、受託製作会社の研究開発費が反映されているため、委託側で研究開発費を分離して処理する。

(完成品を委託)

 資産計上が認められる。ただし、技術的なリスクを負っているのは受託者でも、制作に要した費用はすべて委託者が追っている場合には、実質的に委託者が研究か初を行っていると考えられることもある。


原価計算

 製品マスターの制作原価を製造原価に含め、製品マスターの制作仕掛品・完成品を無形固定資産に振り替えることにより、製造原価から控除する。製品マスターの償却費は売上原価に直接算入する。


減価償却の方法

 見込販売数量(収益)に基づいて償却される。
 毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない。有効期間は原則として3年。

【基本的な考え方】

販売可能期間にわたって販売価格に変動がないと予想される場合
見込販売数量を基準として減価償却を行う
販売収益が減少していくと予想される場合
見込販売収益を基準として減価償却を行う
取り扱う製品の種類が多くて販売可能期間にわたって販売価格が一定しており、かつ、毎期ほぼ一定の販売数量が見込める場合
販売可能期間に基づく償却を行う

【計算式】

当事業年度の減価償却額 = 前事業年度末の未償却残高 × (当事業年度の実績販売数量 ÷ (当事業年度末の累積販売数量 + 当事業年度末の見直し後の見込販売数量))

【各年度の未償却残高が翌期以降の見込み販売収益を超過した場合】

 販売期間の経過に伴い、著しく販売価格が下落し、未償却残高が翌期以降の見込み販売収益の額を超えている場合、当該超過額を一時の費用または損失として処理する。ただし、金額的に重要性があれば、特別損失として処理する。


自社利用のソフトウェア


定義

 ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得を目的とするソフトウェア。または、社内での業務のためにその利用を目的とするソフトウェア。

 将来の収益獲得または費用削減が、確実であると認められない場合または確実であるかどうか不明な場合には、費用処理。

【一般例】

【要件】

  1. 継続性
     ソフトウェアの利用開始時における社内の正式な意思決定を受けた利用目的通りに当該ソフトウェアを利用している
  2. 客観性
  3. 確実性

取得原価

 将来の収益獲得または費用削減が確実である場合、将来の収益との対応の観点から、取得原価を資産計上し、利用期間にわたり償却する。

 ソフトウェアの導入に当たって通常必要とされる設定作業、自社の仕様にあわせるために行う付随的な修正作業等の費用は、購入ソフトウェアを取得するために費用として当該ソフトウェアの取得原価に含まれる。
 大幅に変更するための費用は、収益獲得・費用削減が確実であると認められる場合を除き、購入ソフトウェアの価額も含めて費用処理する。
 データコンバート費、トレーニング費は期間費用として処理する。


資産計上の開始時点

 当該ソフトウェアが将来の収益または費用削減が確実であると認められる状況になった時点。そのことを立証できる証憑に基づいて決定する。


資産計上の終了時点

 作業完了報告書等の証憑に基づいて、ソフトウェア制作活動の終了時点が決定される。

冨倉メモ
 書類業務が増えることになるのは、やだなぁ。

減価償却の方法

 利用可能期間による定額法による償却。利用可能期間は原則として5年以内。

【計算式】

当事業年度の減価償却額 = 前事業年度末の未償却残高 × (当事業年度の期間 ÷ 当事業年度を含む見直し後の残存利用可能期間)


冨倉メモ  収益が見込めるとか、費用削減が見込めるという判断は、多分、稟議書によるのだろうけれど、外れた場合はどうなるのだろう。特に、費用削減については、現実問題として判断ができるのだろうか。

受託開発ソフトウェア


収益計上基準

  1. 外部の第三者に対する財貨または役務の提供
  2. 対価の獲得

 以上の2点が充足されていること = 実現主義

開発成果物がある場合

 収益は、目的物が完成し、検収が完了した時点で計上される。

開発成果物がない場合

 定められている作業を完了した時点をもって完成とする。


制作費用

 顧客の相談にのる、概算見積もりの提示等の製造専業スタッフでない営業担当者の活動費は、注文獲得費として販売費計上する。
 正式に見積書を提出する、スケジュールの打ち合わせに入る等の製造専用スタッフの投入が必要な段階の活動費は、原価として処理する。
 成約できた場合、そのまま減価として処理し、成約できなかった場合は、販売費に振り替える。


転用・流用の会計処理


開発支援ツールとして開発したソフトウェアを市販化する場合
 製品マスターの原価は、外販用に必要な追加加工コストだけで構成される。

受託開発ソフトウェアを第三者にも販売することになった場合
 原価の付け替えは起こらない。

受託開発ソフトウェアを同時に複数の得意先から受注した場合
 共通する部分については配賦計算する。


開示項目


  1. 市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法に関する開示
  2. 自社利用のソフトウェアの減価償却方法

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とみくら まさや (vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date : 2002.10.16 $