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著者 | ジャン=フィリップ・トゥーサン | ||||
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タイトル | テレビジョン | ||||
出版社 | 集英社 | 出版年 | 1998年 | 価格 | 1500 |
評価 | ★★★★★ |
『浴室』から始まったトゥーサンの一連の著作もこれで一段落。いつの間にか主人公は40代で頭髪が少し寂しくなってしまった一方で、人生に対するスタンス(と言うと大げさですけれど)の余裕というか韜晦さかげんが実にいい感じです。
本書は、論文執筆の準備をしている研究者が、妻と子供のバカンス旅行でできたつかの間の独身生活の最中にテレビを見ないと決意するところから始まります。
この風変わりな決心がいつまで続くのかを縦糸に、主人公のこれまた風変わりな研究が無事完成するのかを横糸にして物語は、脱線を繰り返しつつ進んでいきます。
ジッドやジョイス、ベイカー、それにヴォネガットに通じる、この(いい意味での)頼りない物語の進行手法は、トゥーサンのお得意で、『テレビジョン』でも実に巧みに使われています。
実際、読者は、ストーリーのラストを知りたいという欲求と、いつまでもこの文章を読んでいたいという相反する欲求に悩まされることになります。それくらいトゥーサンは些細なことでも魅力的に語る一方で、そうした脱線話の繰り返しにも関わらず、巧みにプロットを進めていきます。
ともあれ、落ち着いたスラプスティックが好きな人には確実にお薦めの一冊です。
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