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著者 | ピーター・エルブリング | ||||
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タイトル | 毒味役 | ||||
出版社 | 早川書房 | 出版年 | 2002年 | 価格 | 1900 |
評価 | ★★★ |
本書は、ルネサンス時代のイタリアの農民ウーゴ・ディフォンテの手記を翻訳したという偽書の体裁を取っています。
ただ、偽書としての出来は、あまりうまいとは思いません。少なくとも、キニャールの『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』と比べてしまうと、見劣りしてしまいます。勿論、エルブリング自身、偽書に徹して世間をからかおうという気はないのだろうと思います。むしろ、これでだまされる方がどうかという気がしないでも……。
とは言うものの、宮廷サスペンスとしては、かなり面白いです。
誰からも恐れられ、憎まれている君主を誰が毒殺しようとしているのか、その君主に毒味役として仕えるウーゴが、いかにして危機を乗り越えていくかをを縦軸にして、兄弟の葛藤、親子の葛藤、美人の娘を持つ父親の葛藤、男女の関係の葛藤を折り込み、ラストのどんでん返しまで、うまくまとめています。
小説、特にサスペンスものは種明かしをしてしまうのもいかがなものかと思うので、これ以上は書きませんが、ラストのどんでん返しは、きちんと手順を踏んでいて、理不尽さを感じさせない点はさすがです。
ちょっと変わったミステリーを探している人は、一度読まれてもいいのではないでしょうか。
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