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著者 | ブルース・チャトウィン | ||||
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タイトル | ウッツ男爵 ある蒐集家の物語 | ||||
出版社 | 文芸春秋 | 出版年 | 1999年 | 価格 | 1800 |
評価 | ★★★ |
楽しくて、しかも不思議な小説です。
基本的なプロットは、陶器の蒐集家であるウッツが残した数々のコレクションの行方はどうなったかというものなのですが、物語の中でウッツのコレクションが消えたことは、ほとんどふれられません。その上、ウッツのコレクションがどうなったのかは、結局のところ分からずじまいのまま終わってしまいます。
しかし、そんなことはどうでもいいと思わせるほど、登場する人物が−少なくとも僕にとっては−魅力的な人々で、かつ、その描写が実に巧みです。
基本的には、蒐集家と呼ばれる人の心理描写が中心になっているのですが、決してステレオタイプにならず、それでいて共感を覚えるものになっています。一般には理解しがたい偏執的な行動や性的な好みに言及しているにもかかわらず、読者の共感を呼ぶことは決して簡単なことではなく、人間に対する深い理解がないとできないことだと、僕は思います。
特別な興奮もなく、かといって退屈でもない。夜遅くゆっくり読む小説を探している方にはお勧めです。
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