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著者 | イタル・カルヴィーノ | ||||
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タイトル | 宿命の交わる城 | ||||
出版社 | 河出書房新社 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 900 |
評価 | ★★★★★ |
ならべられたタロットカードを読み解いていくという手法は、いかにもカルヴィーノらしいなと思います。
カルヴィーノは、人によっていろんな評価があるのだそうですが、僕にとってはグリム兄弟をより現代的に洗練した作家という印象を持っています。民話や伝承を元に、その幻想性をうまく残しながら、現代にも通用する物語として再構築してくれる作家なんてことを言い出すと、やや堅苦しい話になってしまいますが、簡単に言えば、
「大人の童話」みたいな生ぬるさ無しでファンタジーを書く作家
と感じています。暴論ですけれど。
冒頭でも書いたように、本書は、登場人物が並べたタロットカードの意味を、語り手が読み解いていくことでストーリーが進んでいきます。これがうまいんですね。語り手の解釈を、そのまま受け取って読み進めても楽しいですし、語り手の解釈から離れて自分の解釈でタロットの意味を読み解いていくことも楽しい。一粒で二度おいしいなんて陳腐な言葉で語るのはどうかと自分でも思いますけれど、とにもかくにもいろんな楽しみ方ができる小説です。
ともあれ、読後に語るべき言葉を持たない小説に出会うと、本当に幸せを感じます。
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