|Home / 読後感想 | |
著者 | 森村誠一 | ||||
---|---|---|---|---|---|
タイトル | 天下の落胤 人間の剣 江戸編3 | ||||
出版社 | 中央公論社 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 648 |
評価 | ★★ |
うーん、どうなのかなぁ。というのが最初の読後感想。実際、どうなんでしょうね。
歴史小説が難しいなと思うのは、特に登場人物が政治史的に重要な役割を果たした人の場合、あまりじめじめとしてしまうのは、どうなんだろうと感じてしまうことです。
もちろん、学問としての歴史とは異なり、小説なんだから、肩の力を抜いて、歴史的な人物であっても、僕達と同じような人間として表現することは大切なことだと思います。でも、僕達と同じような感覚を持った人間として描く以上、本当に僕達と同じような感覚を持った人物として描いて欲しいというのが、今のところの僕の感覚です。
僕自身、当然、くだらないことにいらいらしたり、落ち込んだり、がっかりしたりすることがあります。多くの場合それは、すごく形而下的なことです。好きな人に振られたとか、周囲の人が合理的な理由もなく気に食わないとか、その種の益体もないことに気を取られてしまうわけです。もしかすると、歴史上の偉大な人物だって、同じように日常の形而下的なことにかかずらって、政治的に重要な判断を下してしまったことがあったかもしれません。しかし他方で、僕自身、形而下的なことだけを考えているかと言われると、少し違うような気がします。規模はすごく小さくなってしまいますが、僕が仕事の上で何かを考えなければいけない時、結果的に正しいかどうかは別にして、一応、プライベートなことは脇に追いやって当面の課題に取り組んでいるつもりです。同様に、歴史上の人物も、やはり政治的な決断を下す時には、多くの場合、プライベートなことは脇に追いやって問題に取り組んでいるんじゃないかなと思います。もちろん、たまにはプライベートなことがかなりの部分を占めることもあるのでしょうが、そればっかりじゃないよねと思います。
本シリーズが、まったくの駄作だとは思わないものの、ちょっと違うんじゃないかなぁと思うのは、歴史上の人物なり事件なりを矮小化しがちな小説家の歴史観そのもに対する僕なりの不信感が根底にあるのかもしれません。
|Home / 読後感想 | |