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著者 | 國領二郎 | ||||
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タイトル | オープン・ソリューション社会の構想 | ||||
出版社 | 日本経済新聞社 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 1600 |
評価 | ★★★ |
インターネットが一般の人々に使われ始めた頃、「インターネットは空っぽ」なんてことをおっしゃる方がおられました。しかし、あれから約10年が経ち、今やインターネットは、多くの人にとって「使用している」という意識をしなくても普通に使っている状況になった現在、信憑性の問題、S/N比の問題など、課題は多々あるにしても、少なくとも「空っぽ」な状態にはなっていないと思います。
インターネットが普及したことで、情報の発信と流通が格段に低コストになり、これまでマスメディアではほとんど取り上げられなかったような活動に関する情報が入手しやすくなったことは、重要な変化の一つといえると思います。また、流通している情報を元に知の再生産が容易になったことも大きな成果だと思います。
インターネットの特徴を改めて挙げると、
この3点にまとめられるのではないかと思います。
このインターネットを基盤として新しい社会のあり方を提案することが、本書の目的となっています。
國領氏の主張を要約すると、
分権型なものを主役にしながら、補完的に集権的な仕組みを使って構築しようという提案をしたい。
情報には(1)追加一単位生産して配布するコストが限りなくゼロに近づきつつある、(2)多謝に伝達しても自分の手元にも残る、(3)共有して他者の持つ別の情報と組み合わせることで価値が高まる、(4)同じ情報をより多くの人間が持つことで価値が高まる、など物財にはない特性がある。
情報や設備を共有することで大きな価値を生み出しているネットワークの構造と、排他的な所有権に依拠している市場経済の原理の矛盾(を解消する必要がある)。
そのためには、
製造業のサービス化という表現で考えてもいいかもしれない。製造業に、モノを作って売る商売でなく、道具を用意して利便性を提供する業になってもらう。つまり、新製品をどんどん出して、既存商品を陳腐化させることから、より安定したサービスを維持することに競争の軸を転換してもらうのである。
とは言いつつ、國領氏も言っているように、
統制によらず協調によってまとめあげるためには、経済的・非経済的なインセンティブの設計の巧拙が正否を分ける。
これが一番難しいわけで。
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