平家1

【感想】

　池宮彰一郎版の平家物語ということで期待していたのだけれど、少しだけ期待はずれ。

　期待はずれの理由は、池宮氏が平安末期の状況を現代に重ね合わせて指摘している問題点が、どうにも言い古されているように感じてしまうことにあります。少なくとも僕には目新しさがないように感じられて仕方ありません。

　確かに、池宮氏が悲憤慨嘆している官僚群の問題は、大いにあり得る事だとは思うのですが、この問題は、ずいぶん以前から何度も指摘されています。むしろ今必要なのは問題点を指摘することではなく、問題を解決する方法を提示することではないかと思います。

　ところが、少なくとも本巻では、清盛が行おうとする様々な改革に対する抵抗勢力として官僚群のどうしようもない性格をただ嘆くだけで、官僚群に対する具体的な解決策が書かれているわけではありません。そのため、結局のところ、床屋談義以上の域を出ていないのではないかと思います。

　本来なら第2巻以降に期待と言いたいところなのですが、でも、この後の平家って、どんどんグダグダになっていき、官僚群に対抗する勢力と言うよりは、むしろその官僚群と同種の悪癖を急速に吸収していくわけで……。