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著者 | カレル・チャペック | ||||
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タイトル | カレル・チャペックの日曜日 | ||||
出版社 | 青土社 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 1400 |
評価 | ★★★★★ |
チャペックです。
ここ最近特にその傾向が強くなってきていると自分でも思うのですが、やはりチャペックになると手放しで喜んでしまいます。実際、チャペックのこの優しさはいいなと思います。
本書は、1920年代、30年代のチェコ国民に対して書かれたエッセー集です。
言うまでもなく、チャペックはプロの作家なわけですから、まず、1900年代初頭のチェコの人々に理解され、共感されなければいけません。チャペックは、同時代の同じチェコの人々だけを常に意識して、数々の文章を書いたのではないかと思います。なにしろチャペックは作家であること以前にライターだったのですから。
それにもかかわらず、チャペックの書いた文章が、自体も国境も越えて、多くの人々の共感を得ているのは、チャペックの視線の優しさ、温かさにあるのではないかと僕は思っています。
チャペックは、彼の生きた時代のチェコの社会に対して警鐘を鳴らします。時にそれは痛烈な皮肉として書かれることがあります。それは全くもって無理のないことで、チャペックの生きた時代のチェコは、フランスやイタリア、ドイツといった周囲の国々に比べて非力な存在で、それがために自国の文化を否定するか、はたまたその反動として極端な愛国主義に走るか、いずれにせよ右翼であれ左翼であれ非寛容で、他者を排除する性格に向かっていた時代でした。チャペックは、そのような極端な思想、あるいは偏狭な排他主義、どちらも相容れないものとして、攻撃せざるを得なかったのではないかと思います。
ところが、同時代のチェコの状況を攻撃しながら、チャペックはチェコの人々を軽蔑したり、チェコの文化を否定することはありませんでした。
本当はみんな分かっているはず。ただ、うまく言えないだけ
チャペックが書いたものを読んでいて感じるのは、こうしたチャペックの人間の良心を信じる姿勢です。
僕自身は、正直に言えば、性善説ではなく、性悪説に傾きがちなのですが、ただ、下手な性悪説は単に自分以外は馬鹿者と見なしがちなこと、言い換えれば、「自分は他者よりも優秀だ」と自己暗示にかけがちなことを考えると、チャペックの優しいものの見方は、本当に少しでも近づきたいなと思います。
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