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著者 | 池宮彰一郎 | ||||
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タイトル | 平家3 | ||||
出版社 | 角川書店 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 629 |
評価 | ★★ |
この読後感想を書いているときには、既に第4巻まで読み終えているのですが、それにしても評価が難しいなと感じています。
本書は、歴史書ではなく、あくまでも歴史小説です。ですから、「事実と異なる!」「フィクションだ!」と指摘するのは野暮以外の何者でもありません。ただ、小説だとしても、そこに登場してくる人物は実在の人物ですし、取り上げられる事件は実際に発生したことなのですから、できることなら実態から、あまり離れて欲しくないなと僕は思います。無論、僕達が一般常識として持っている「事実」とは異なるからといって、実態から離れているとは一概に言えないと思います。僕達が一般的に持っているイメージとは異なる「事実」を提示することが、作家の役割でもあるし、特権でもあると思います。少なくとも僕は、自分の考えをうまく楽しさよりも、全く考えもしなかった事を知る楽しさの方が好きです。
池宮版平家物語の場合、従来巨悪の権化と思われてきた平清盛を、平安貴族という官僚制度に対する改革者として位置づけています。このこと自体は、決して実態から離れたものではないと思います。実際、平家自体は武家から貴族的な性格に変貌してしまったとしても、その後に続く鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府といった武士による支配体制の嚆矢だったと言っても、言い過ぎではないでしょう。
ただ、僕は、官僚制度を打破しようとしたとする池宮氏の清盛像に素直に納得できません。少なくとも僕は、清盛が意識的に官僚制度に対抗したというよりは、新参者が、過去のしがらみなどを全く知らない強みを発揮しただけのように思えて仕方ありません。3巻目を読み終えても、池宮氏の清盛像に今ひとつ説得性を感じられないというのが正直なところです。池宮氏が現代の官僚に対して不満を持っていることはよく伝わってきたのですが……。
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