平家4

【感想】

　最終巻です。

　現代の官僚制に対する批判の書として読んだ場合、同感だと思われる方も多いと思います。この点について、僕自身は、必ずしも池宮氏と同意見というわけではないのですが、その辺りの僕自身の考えは、前巻までの読後感想で書いているので、ここでは省略。

　で、エンターテインメントとして読んだ場合、僕自身はあまりうまくなかったのかなぁと感じています。

　うまくなかったのかなぁと感じている点。

1. 平治の乱から書き始めているので、清盛が活躍するイベントが最初に終わってしまっていること
2. 2巻、3巻は清盛の改革としては停滞してしまっていること
3. 平家滅亡に至る戦役について、義経の好敵手が不在なこと

　盛り上がりどころが少なかったのではないかというのが、正直なところです。

　清盛という人間の面白さを描くのなら、平治の乱までの活躍をでっち上げてでも書くべきだったと思いますし、逆に清盛の後継者としての義経の活躍ぶりを描くのなら、平家の中に、義経に対抗できるような人物をでっち上げるべきだったのではないかと思います。

　要するに、「ライバル不在」が、本シリーズを少々退屈なものにしてしまった原因なのではないかと思います。例えば、『四十七人の刺客』における大石内蔵助に対する色部又四郎のような存在がいれば、また違ったものになったのではないかと思います。

　確かに、平清盛に対しては後白河法皇がいることにはいるのですが、どちらかというと、常に清盛に一歩も二歩も先を行かれ、そんな清盛に対して一発逆転をねらうというよりは、清盛の行為に対して追認を与えていくという存在になっています。ましてや義経にいたっては、正面の敵である平家には人がおらず、背面の敵である頼朝は、猜疑心の固まりのつまらない人物として描かれています。そのため、清盛にしても義経にしても、好敵手が全身全霊をかけた策略の裏の裏をかいて打ち勝つという爽快感に欠けてしまっているように僕には思えます。義経はともかく、平清盛って面白そうな人だと思っていただけに残念でした。

　などなど、このシリーズについて、本当に何様だ発言連発ですね。