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著者 | ヴァルター・メアス | ||||
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タイトル | キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生(上) |
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出版社 | 河出書房新社 | 出版年 | 2005年 | 価格 | 2000 |
評価 | ★★★★★ |
ブルーベアは27の人生を生きる。その半分、13と2分の1をぼくはこの本で明かそうと思う。そのほかについては語るまい。クマたるもの、陰の部分をしょっていなければならぬ。それでこそ、謎めき、魅力的にもなろうというものだ。
本書を手にとり最初に飛び込んできたこの一文で、僕は完全にノックアウトされました。ノックアウトされた理由をうまく説明できないのですが、その一方で、言葉で説明する必要性を全く感じられずに、ただただ感覚的に「やられた」としか言いようがないのが正直なところです。
とにもかくにも。
本巻では、ブルーベアの誕生から7つ目の人生までのお話しになっています。
可愛らしい装丁、可愛らしい挿絵、主人公がクマの童話。普通なら優しい感じのお話になりそうです。でも、メアスはそんな予想を素敵に裏切ってくれます。
7つ目までの人生でブルーベア君は次々と奇想天外な出来事に出くわし、そのうち何度かは生命の危機に瀕するといったわけで、ドタバタに次ぐドタバタ、波瀾万丈の展開が続きます。それにもかかわらず、あるいは、そのためにと言うべきなのかもしれませんが、ブルーベア君は、実に含蓄のある哲学的なセリフの数々を披露してくれます。
例えば。
「あの頃を思いだすと感傷的な気分になる。だが時間は元には戻らない。それは残念なことだが致し方ない」
「若ければ若いほど、退屈は耐えがたい」
「一般的に言って危険の最大の原因は軽はずみな性格にある」
「人生には、世界中の生き物が奥まった薄暗い部屋に集まって、ぼくらに対する反抗を誓い合ったとしか思えないときがあるものだ」
物語のドタバタした感じと、それを受け入れるブルーベア君の達観したかのような雰囲気のアンバランスさが、すごくいい感じです。中巻の発売が待ち遠しいです。
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