|Home / 読後感想 | |
著者 | 佐藤大輔 | ||||
---|---|---|---|---|---|
タイトル | 征途(全3冊) (下巻) |
||||
出版社 | 徳間書店 | 出版年 | 2003年 | 価格 | 上巻571 中巻571 下巻686 |
評価 | ★★★ |
佐藤さんにしては珍しく完結したシリーズです。
物語は、1995年、日本初の有人宇宙飛行の発射シーンから始まります。これは完全に僕の個人的な推測に過ぎませんが、このシリーズが佐藤さんにしては珍しく(失礼な言い方ですけれど)完結した原因の1つが、ここにあるのではないかと思っています。執筆時の佐藤さんは、こんな感じだったのではないかと想像しています。
くどいですが、以上はあくまでも僕の勝手な推測です。
ともあれ。
日本艦隊のレイテ湾突入を成功させるために、天才的な軍人の登場や奇想天外な新兵器の投入といった、多くの仮想戦記作家が安易に用いるであろう要素を、佐藤さんは排除しています。軍人あるいは政治家としては優秀だとしても、それ以外についてはごくごく普通の人、生産まで視野に入れた技術的背景を持った兵器、そうしたものの積み重ねによってストーリーが展開されます。
今回のレイテ湾突入についても、いくつかの細かな伏線を張った上で、最終的には一発の跳弾、それによって歴史を決定的に書き換えています。この辺のリアルさは、他の追随を許さない佐藤さんならではなのではないかと思います。
さらに、レイテ湾突入を成功させた結果、バラ色の未来が開かれるかというと、決してそうではなく、レイテ湾突入、沖縄突入という軍事的な成功の結果、日本は朝鮮半島と同じく、アメリカとソ連に分断されてしまいます。この冷めた思考が、僕が佐藤さんの書く仮想戦記物を好きな理由です。
分断された日本が再び統一される後半については、やや急ぎすぎたのかなという印象を受けましたが、全体としては、面白く読めました。何より、佐藤さんのシリーズの中で完結した数少ない作品ということで、僕の中では評価がどうしても高くなってしまいます。
|Home / 読後感想 | |