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著者 | ロバート・グレーヴズ | ||||
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タイトル | この私、クラウディウス |
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出版社 | みすず書房 | 出版年 | 2001年 | 価格 | 3800 |
評価 | ★★★★★ |
うまいなぁというのが読み始めてすぐの感想。
うまいと思ったのは、まずなんといっても主人公の設定です。古代ローマ帝国の4代目クラウディウス帝という、世間一般にはあまり知られていない皇帝を主人公に設定することで、実際には初代皇帝アウグストゥスから3代目カリグラまでの、良きにつけ悪しきにつけローマ帝国初期の有名な皇帝達の治世を追体験することができます。しかも、綿密に当時の世情や風俗を調べた上で描かれているので、「いかにも!」という雰囲気をうまく作り出しています。発表された当時、本当にクラウディウス帝が書いたものと勘違いされたというエピソードにも納得できます。
また、クラウディウス帝のいかにも学究肌的なキャラクター設定も、カエサルから始まってティベリウスまでの軍人的な色彩の濃い人物達の中にあって異色といえます。そんな彼が腕力に頼るのでもなく、政治的な術策に頼るのでもなく、それでもなんとか剣呑な時代を生き残っていく姿は、日本人の好みにあっているのではないかと思います。
アウグストゥス、ティベリウス、カリグラといった皇帝達の私生活が中心になっているため、僕自身の好みからいうと少し外れてしまうのですが、塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズで、古代ローマに興味を持たれた方、一度お読みになっても損はないと思います。
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