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著者 | 阿佐田哲也 | ||||
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タイトル | 無芸大食大睡眠 |
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出版社 | 集英社 | 出版年 | 1988年 | 価格 | 590円 |
評価 | ★★ |
もしかすると、こういう感覚になるのは男性だけなのかもしれませんけれど、時々無性に無頼な生活に憧れてしまうことがあります。もっとも僕の場合、飲む方はからっきし、ばくちのセンスもないし、女性に持てるほどの器量もないので、いつも憧れだけで終わってしまうのですけれど。
ともあれ、そういう無頼感情におそわれたときに読みたくなるのが、阿佐田さんの書いたものです。色川武大、井上志摩夫ではなく、阿佐田哲也だということで眉をひそめる方もおられるかもしれませんが、やっぱり僕にとっては、『麻雀放浪記』の影響が大きいわけです。
本書は作家として充分に認められた阿佐田さんの日常を書きつづったエッセーで、坊や哲と呼ばれていたころの痛いくらいギスギスした日々ではなく、楽隠居風な感じなのですが、昔からの友人が音信不通になったなんて時々ハッとさせられるような記述があってドキッとさせられます。面白いのだけれど、どこか悲しい。そんなエッセー集です。
実際、30歳を超えると、はったりと勢いだけで乗り越えてこられたことが、だんだんそういうわけにもいかなくなる。できる人なら、それでもポジティブ思考でガンガンやっていかれるのでしょうけれど、典型的なダメ人間な僕としては、はったりが次第にホラ話になり、「将来こうなるんだ!」という勢いが、「今までこんなことやってきたんだ」と過去の(さして大したことない)経験に置き換わっていくわけです。
こうなると、もう後はグズグズになっていくのは火を見るより明らかなのですが、阿佐田さんの書いたものを読んでいると、それもいいのかなと思ってしまいます。負け犬なのですけれど。
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