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著者 | デイヴィッド・メイン | ||||
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タイトル | 小説ノアの箱船 |
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出版社 | ソニー・マガジンズ | 出版年 | 2005年 | 価格 | 1800円 |
評価 | ★★★ |
典型的な日本人的宗教観しか持ち合わせていない僕にとって、聖書はギリシア神話と同じような意味での「読み物」として、どうしても位置づけてしまいます。そのため、どちらかといえば旧約聖書の方が読みやすいわけですが、その旧約聖書ですら、何となく突っ込みどころがたくさんあると言い出すような体たらくです。
ともあれ。
本書は旧約聖書の中でも有名な「ノアの箱船」のアレンジ版です。
アレンジ版といっても、決して旧約聖書の記述をちゃかしているわけではなく、むしろ真面目に再現しています。実際、非常に細かな逸話も丁寧に記述されていて、著者がきちんと聖書を読んでいることは充分に伝わってきます。
その上で、本書ではノアの箱船の逸話をノアの周辺の人々、特にノアの妻、息子達の妻といった女性達の視点を中心にして描いています。
聖書ではほとんど触れられることのない女性達の物語を描写することによって、メインはキリスト教の(といっても旧約聖書はキリスト教の本質ではないのでしょうが)持つ暴力的な側面をうまく描いています。
例えば、ノアに命じられ、夫と離れて動物探しに向かわされるイリヤの口を借り、このように述べます。
男たちはとてもおもしろい。雄が支配するオオカミの群れを見せて、男が支配するのは自然の理だと言う。いいでしょう。でもハチの巣は女王バチの支配のもとに作られ、雄は僕として使われるわ。すると男たちは異議を唱える。人間は虫ではない。
これに留まらず、男性としてぐうの音も出ない指摘は、様々な場面で散見されます。
筒井康隆の『虚構船団』のようなハチャメチャな内容を期待して読み始めた僕は、最初、メインの投げる直球に戸惑いを感じてしまいましたが、そんな戸惑いもすぐに消え、最後まであっという間に読み終えてしまいました。
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