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著者 | 丸谷才一 | ||||
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タイトル | 闊歩する漱石 |
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出版社 | 講談社 | 出版年 | 2006年 | 価格 | 590円 |
評価 | ★★ |
丸谷才一氏による夏目漱石の作品論です。扱われているのは、『坊ちゃん』、『三四郎』、『吾輩は猫である』といった初期の作品です。
どちらかといえば、大衆向けの娯楽作品として、これまであまり正面から論じられることが少なかったこれらの作品の方を『こころ』、『明暗』といった後期の作品よりも高く評価しているのが丸谷版漱石論の特徴です。
丸谷氏によれば、本書で取り上げられている漱石の初期の作品は、日本版のモダニズム文学として位置づけられています。文学に詳しい方なら、自明のことなのかもしれませんが、僕にとっては、この指摘は非常に新鮮でした。
今の僕達にとっての「小説」と当時の「小説」との意味合いはずいぶん違ったのだろうと思います。今の僕達にとって、小説の様々な決まり事は、既に自明なこととして受け入れていますが、例えば起承転結や、意識的な語り手の存在等、夏目漱石の時代にとっては、全てが試行錯誤だったのではないかと思います。
その意味で、文明開化のこの時期にお手本とした西洋文学がモダニズム文学だったことは幸運だったのかなと思います。そんなことをぼんやり考えながら、本書を読んでいました。
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