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著者 | デイヴィッド・イーリイ | ||||
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タイトル | 大尉のいのしし狩り |
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出版社 | 晶文社 | 出版年 | 2005年 | 価格 | 2400円 |
評価 | ★★★★★ |
『ヨットクラブ』に続いて、イーリイの作品です。本書も短篇集です。
表題作にもなっている「大尉のいのしし狩り」は、規則主義の上官に対して復讐する話です。完成度は非常に高いのではないかと思います。読者に二三歩先の展開を予感させつつ、でも、五六歩先の予想はさせない。このあたりのバランスが絶妙で、安心して展開を追いつつ、それでもハラハラさせられる仕上がりになっています。お見事としかいいようありません。
この表題作の「大尉のいのしし狩り」だけでなく、「スターリングの仲間たち」、「裁きの庭」、「草を憎んだ男」、「別荘の灯」、「忌避すべき場所」、「登る男」等、死への道筋を描いた作品が多く、A.ビアスを彷彿とさせるような淡々としたブラック・ユーモアの作品が並んでいます。
前作『ヨットクラブ』が、SF 仕立ての作品が多かったのに比べて、本書では、地に足がついたとは言わないまでも、比較的日常的な光景を出発点にした作品が中心になっています。使い古された言い回しになりますが、何気ない日常がどんどんと非日常に変化していく様が非常に面白いです。加えて、登場人物がいい意味でステレオタイプになっているので、古き良き時代のコメディ映画を見ているような気分になりました。
チャップリンよりもマルクス兄弟、キートン、ベルーシの方が好きだとおっしゃる方にはお勧めの1冊です。
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