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蒼ざめた馬 漆黒の馬

著者ロープシン
タイトル 蒼ざめた馬 漆黒の馬
出版社未知谷 出版年2006年 価格2800円
評価★★★
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 本書を読んでいる頃、共産党の宮本氏が亡くなりました。何となく一つの時代の終わりを象徴しているようで。

 さて。

 僕自身は1971年生まれ。大学紛争やなんやかやが終焉し、右にせよ、左にせよ主義の堅苦しさが苦手なタイプ。なかでも共産主義は、ソ連崩壊に見られるように、人間性には合わないのかなと思ってしまうような感じです。もっとも、日本の共産党に言わせると、ソ連は共産主義ではないということになるのでしょうけれど。

 とまれ。

 本書は、その共産主義のために実際にテロリストとして活動したロープシンの自伝的な小説です。今、共産主義と言いましたが、ロープシン自身は、ソビエト革命というよりは、ナロードニキ運動家なのでしょうが、いずれにせよ自身の主義のために暴力行為を行った人です。

 「テロ」という行為は、現代、卑劣な行為として定義されています。

 僕自身、自分の主張のために他人の生命を奪う行為、あるいは正義のために多少の犠牲もやむを得ないと主張する行為には、嫌悪感を持ってしまいます。

 しかし、他方で、構造的暴力が行われている集団の中で、その構造的暴力を打破するために行われたテロは、どのように考えればいいのか、僕には何とも言えません。

 たとえば、北朝鮮で現体制を打倒するためにテロが行われた場合、「テロは卑劣」と言っている人達がどのように発言するのか、ちょっとした意地悪な気持ちになってしまいます。

 もう一度繰り返しますが、本書は「実際にテロ活動を行っていた人物」が書いた小説です。それにもかかわらず、あるいはそれ故にか、内容は自己賞賛するようなものではなく、むしろ重苦しく、暗いものになっています。

 テロを行わざるを得ない状況。僕たちはもう少しそのことの意味について想像力を働かせる必要があるのではないか、読後そんな気持ちになりました。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.com) $ Date : 2007.08.12 $