|Home / 読後感想 | |
著者 | シリ・ハストヴェット | ||||
---|---|---|---|---|---|
タイトル | フェルメールの受胎告知 |
||||
出版社 | 白水社 | 出版年 | 2007年 | 価格 | 2800円 |
評価 | ★★★★★ |
絵画は詳しくありません。
手法はもちろんのこと、絵画の歴史、有名な作品にしてもほとんど知識を持っていないのが正直なところです。そのため、僕の絵画鑑賞といえば、ぼーっと見て、共感できる作品か、そうでないか、それが唯一の判断基準です。端的に言えば、直感だけで鑑賞しているわけです。このような鑑賞方法は、専門家から見れば眉をひそめるような見方なのですけれど。
ともあれ。
共感できるかどうかは、当然のことながら個人的な体験です。それ以上でもそれ以下でもありません。従って、それは外に出るものではなく、通常は自分自身の中で完結するべきものだと僕は思っています。しかし、それでもなおなぜ自分が共感したのか、共感しなかったのか自分自身確認するためにも言葉にした方がいい場合があります。
そのときの手法として、ハストヴェットさんの芸術鑑賞論が非常に参考になるのではないかと思います。
彼女は気になる絵画を徹底的に見ます。とにかく見ます。彼女の感情を刺激した「何か」を発見するまで絵と対峙します。その典型的な好例が表題にもなっているフェルメールの『真珠の首飾りを持つ女』です。
画像:http://f.hatena.ne.jp/toxandoria/20070418225718
この画像の左上窓枠の部分にハストヴェットさんは、不思議な物体を発見されます。皆さんは気づかれましたでしょうか? 確かに、左上の窓枠の部分に卵状の物体が存在しています。
この小さくて見過ごしてしまいそうな存在。しかし、いったん気がついてしまうと、その違和感は有無を言わせないものがあります。
この卵状の物体の存在に気がついたことから、ハストヴェットさんは、この絵がオランダの風俗描写にとどまらず、マリアの受胎告知の意味を内包しているのではないかと推測されます。
ハストヴェットさんの考察が正しいのかどうか、実は僕には分かりません。しかし、絵と向かい合うこと、それは絵を描いた人と向き合うことに他ならないと僕は考えています。その意味で、フェルメールがこの絵を描くときに何を考えていたのか、絵そのものを出発点にして丁寧にたどっていかれるハストヴェットさんの鑑賞方法は正しいと思います。
|Home / 読後感想 | |