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著者 | カート・ヴォネガット | ||||
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タイトル | 国のない男 |
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出版社 | NHK出版 | 出版年 | 2007年 | 価格 | 1600円 |
評価 | ★★★★ |
本書はヴォネガットさんのエッセー集です。もっとも、小説でも一人称による語りで書かれた作品が多いため、エッセーと小説の線引きが(いい意味で)曖昧な印象を受けます。実際、本書で書かれているヴォネガットさんの考え方は、小説の中でも形を変えて主人公達が語っています。
たとえば、
この地球はいまやひどい状態だ。しかしそれはいまに始まったことではなく、ずっと昔からそうだったのだ。「古きよき時代」など、一度たりともあったためしがない。
わたしは、死んだら――死にたくはないが――天国に行ってそこの責任者にこう尋ねてみたい。「何がいい知らせで、何が悪い知らせでしたか?」
こうした台詞が、『スラップスティック』の主人公であるアメリカ大統領の口から語られたとしても、それほど違和感ありません。
ヴォネガットさんの思想は、リベラルというよりも、むしろ左翼に近いのだろうと感じています。アメリカでは異端的な考え方なのだろうなとも思います。ただ、そんなヴォネガットさんの考え方が、東洋の小さな島国に住んでいる僕には、すんなりと入ってきます。
もうヴォネガットさんの新作は読めなくなってしまいましたけれど、でも、未訳の作品はまだまだあるので、そうした作品がこれからも翻訳されていけばいいなと思います。
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