|Home / 読後感想 | |
著者 | コーネリアス・メドヴェイ | ||||
---|---|---|---|---|---|
タイトル | ミスタ・サンダーマグ しゃべるヒヒの話 |
||||
出版社 | ランダムハウス講談社 | 出版年 | 2007年 | 価格 | 1300円 |
評価 | ★★★★★ |
なんとも不思議な小説。
本書は、ヒヒに言葉を教えることに成功したと主張する動物学者が行方不明になるところから始まります。数年後、動物学者が住んでいた街にヒヒの家族が迷い込んできます。ヒヒの一家は廃屋に住み着きます。その中の1匹は、人語を解し、自らも人間の言葉を話します。
ここまでなら、単なるファンタジー小説ですが、本書がへんてこりんなのは、街並み、住人の様子、ヒヒの生態などは語り手である記者によって丹念に描かれているにもかかわらず、肝心の「ヒヒが話すことに対する住人の反応」については、すごくあっさりと描かれています。むしろ、住人はヒヒが話すことを当然のように受け止めています。
ここで最初の設定が、ゆらりと立ち上がってくるわけです。
はたしてこの「ヒヒ」は本当にヒヒなのでしょうか? それとも動物学者のなれの果てではないのでしょうか? 住人はそのことを知っているからこそ、あえてヒヒが話すことをスルーしているのではないでしょうか? しかし、詳細な描写にもかかわらず、本書はその点についての手がかりを一切提供してくれません。そのため一読後、すぐにもう一度読み直したくなります。うまいとしか言いようがありません。本当に面白いです。
|Home / 読後感想 | |